一般的に男性デザイナーがデザインをすると、どうしてもその中にインパクトを求めてしまいます。
自分ではいいデザインができた、と思っているのですが、女性のウケがよくないことがあるのですが、決まってインパクトを重視したものでした。
男性と女性は同じ人間なのですが、デザインに対する見方がどうも違うようです。
それは、男性と女性でモノの見方に差があるためです。太古の昔、男性は狩りをしていた習慣から、獲物に注目がいくように一点を見るのに集中しやすいのに対し、子育てや家事をする女性は、いろんなところに目がいくようにできているからです。
ほんのちょっと前まで、男性が優位な社会が続いていたので、世の中では男性的なデザインが好まれたのですが、バブルが崩壊し経済が発展しなくなってきたころから、男性的なデザインの優位性が崩れてきました。
女性の社会進出も加わり、買い物では主婦が徐々に力を持つようになり、それに伴って女性が好むデザインを求められるようになりました。
そもそもグラフィックデザインはもともと成熟度が高かったので、女性的なデザインへの移行は早かったように思われます。
逆にWEBデザインの方は、プログラミングが必要となることより男性優位の世界だったのですが、こちらもデザインが購買に大きく左右するようになり、買い物の主導権をにぎる女性のデザインがだんだん好まれるようになりました。
こうなると男性デザイナーは大変です。
自分が正しいと思うデザインをつくるのではなく、どうしたら女性っぽいデザインができるのか考えながら制作しなければなりません。お得意なインパクトは必要ないのです。
男性が得意とするデザインはインパクト重視のものです。
女性は逆にインパクトはあまり必要ありません。
インパクトがない分、どこでデザインレベルを上げるか、というと、レイアウト、中でも余白です。
レイアウトはデザインの基本ということもあって、これまで私もこの手の本はよく読んできたつもりだったのですが、どうも余白について具体的に書かれている本には巡り合いませんでした。
ホワイトバランスについて学んだことはあるのですが、余白と言われた方がわかりやすいような気がします。バランスといわれるとつり合いをとらなければならない、というプレッシャーがかかるのですが、余白の場合、てんこ盛りにしたデザインから、情報を差っ引いていけばいいので、イメージしやすいからだと思います。
グラフィックデザインでもwebデザインでも、インパクトに頼らず、余白で情報を伝えることは大事です。
写真の世界では「引き算で考える」とよくいいますが、盛るのではなく、引いて訴えるのです。
ソシム「けっきょく、よはく。」では、この引き算に関し、男の私でも十分納得するような解説が書かれています。特にうれしいのは、NGデザインとOKデザインの二つが対比させていること。
この手のデザイン本の場合、OKは大きく掲載され、その横にNGデザインがちょこっと置かれていることが多いのですが、「けっきょく、よはく。」では、同じ扱いで並べられています。
自分でも、NGバーションのレイアウトで納品しているなぁ?、と反省させられると同時に、今まで気づかなかったレベルアップの方法がわかりためになります。
また、OKデザインではいくつかバリエーションが並べられているのもうれしいです。
というのも、バリエーションを眺めているうちに、余白のパターンが見えてくるからです。
NGの中には自分が得意とするデザインパターンもいくつかありました。
WEB関係では女性用の商品も扱う機会がぐっと増えてきました。ここでじっくりと余白の勉強しなおさなければならないですね。